【醸造原料ガイド】モルトの基礎分類とCOA(分析証明書)の解読

【醸造原料ガイド】モルトの基礎分類とCOA(分析証明書)の解読

目次 (Table of Contents)

1. モルトの製造プロセスと分類

ブルワリーでの再現性と仕込み効率を高めるためには、各モルトの製法とスペック数値(COA)の理解が欠かせません。麦芽は加熱・焙煎プロセスによって大きく3つのスタイルに分類されます。

モルトの3大分類(クリックで詳細を展開)

① キルンドモルト(Kilned Malts):
低温で制御しながら乾燥させた麦芽。酵素活性が高く、ベースモルト(Brewers Malt)としてレシピの最大100%まで使用可能です。Victory® Maltなどのライトスペシャルティモルトもこの分類に含まれ、ビスケットやトースト香を与えます。

② カラメルモルト(Caramel / Crystal Malts):
ドラムロースターで水分を保ったまま加熱し、胚乳内で糖化を進行させた結晶化麦芽(Caramel 60Lなど)。非発酵性デキストリンを多く含み、ビールのボディ感、泡持ち、甘やかなカラメル香を向上させます。

③ ローストモルト(Roasted Malts):
高温で強力に焙煎した麦芽。酵素は完全に失活しますが、漆黒の色彩とローストフレーバーを付与します。Midnight Wheat Maltのように苦みや渋みを除去したディビタードタイプのロースト麦芽も含まれます。

2. 代表例:対比で見る2つのモルト製品

Hakko Supplyでは46種類以上のBriess社製モルトを取り扱っています。ここでは、分析値の対比が最も分かりやすい代表的な2製品(糖化を担うベースモルトと、渋みを出さずに色度を調整するロースト小麦モルト)を例としてピックアップします。

Briess Brewers Malt
Brewers Malt
2-Row Base Malt / 2.1 SRM
高糖化力(140°L)・糖化の主軸エンジン
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Briess Midnight Wheat
Midnight Wheat
Bitterless Black Wheat / 550 SRM
渋みを出さない滑らかな黒色付与
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3. COA(分析証明書)テクニカル指標の解読

COA(Certificate of Analysis)の各項目は、マッシング時の糖化効率や発酵進行度を直接左右します。

主要な分析指標の定義(クリックで展開)
  • Extract FG Dry Basis / Extract CG Difference(細粉・粗粉エキス差): Fine Grind(細粉)は理論上の最大抽出エキス、Coarse Grind(粗粉)は仕込みでの粉砕度合いに近い数値です。両者の差が1.5%以下であれば、溶解度が高く安定した糖化が期待できます。
  • Protein(全タンパク質 %): 麦芽に含まれる全タンパク質量。10.5%–12.0%の範囲が酵母の栄養源確保と泡持ちのバランスに最適です。
  • S/T Ratio(Soluble/Total Protein / コルバッハインデックス): 全タンパク質に対する水溶性タンパク質の割合。38%–45%が適正値であり、35%未満は糖化遅延や混濁リスク、48%超過は泡持ちの低下を招きます。
  • Alpha Amylase(α-アミラーゼ): でんぷん鎖をランダムに切断してデキストリンを生成する酵素。ビールのボディ感や残糖度に影響を与えます。
  • Diastatic Power (°Lintner / 糖化力): α-アミラーゼとβ-アミラーゼを合わせた総合的な酵素力。ベースモルトとして自家糖化するためには最低35–40°Lが必要です。
  • Color (°SRM / 色度): 麦芽がビールに与える色彩の指標。淡い麦わら色(2.1 SRM)から漆黒(550 SRM)まで様々です。

4. ベースモルト vs ローストモルト スペック比較

仕込みの核となるベースモルト(Brewers Malt)と、色彩付与に特化したロースト麦芽(Midnight Wheat)の技術データを比較します。

テクニカル指標 Briess Brewers Malt(ベース) Briess Midnight Wheat(ロースト)
モルトスタイル 2-Row Base Malt Bitterless Black Wheat Malt
Extract FG (Dry Basis) 81.0% 水分 6.5%(低発酵性エキス)
FG / CG Difference 1.0%(高い分解度) 非該当(酵素なし)
Protein (%) 11.0% 小麦ベース数値 (~12.0–13.5%)
S/T Ratio 42.0(最適溶解) 非該当
Alpha Amylase 72 0(焙煎により失活)
Diastatic Power 140 °Lintner(高糖化力) 0 °Lintner(非糖化性)
Color (SRM) 2.1 SRM(淡い麦わら色) 550 SRM(深みのある黒)
仕込みでの役割 レシピの最大100% / 糖化の主軸 engine レシピの1–7% / 渋みを出さない色度調整
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